昨年の台風15号は、長期間にわたる大規模な停電、家屋・農業用ハウスの損壊、農作物への被害、続く21号による大雨は家屋への浸水、道路破損・冠水等本市にも甚大な被害をもたらしました。市長は対策本部をいち早く立ち上げ、そのもとで不眠不休の復旧に当たってこられた職員のみなさんに、心から敬意を表します。
令和元年度は復旧・復興のさなかに、新型コロナウイルス感染症への対策が求められ慌ただしい年となり、予算執行は国とのかかわりで地方財政が大きく歪められた中でのもとなりました。
まず、1点目には、10月からの消費税率の引き上げです。
2014年4月に消費税8%増税以降、家計消費は世帯当たり年25万円も落ち込み、働く人の実質賃金も年平均10万円も落ち込んでいます。増税前を見越した食料品の相次ぐ値上げなどで、消費者の購買心理も冷え込み、年金や生活保護費の削減、医療介護などの社会保障の連続改悪により国民生活は疲弊しきっている中での引き上げとなりました。
八街市も、この引き上げにともなって、公共施設の使用料や家庭雑排水収集運搬手数料、上下水道料金に引き上げ分を転嫁し、市民生活と市民活動の抑制を一層すすめたことは、住民の福祉増進に反する事であり、認めることはできません。
消費税法第60条第6項の規定から、一般会計で扱う公共料金分は、納税額が発生せず、国への納税義務はありません。市は消費税法の特別措置により納税事業者ではありません。一般会計に入る市民から預かった消費税は全て、市の収入となります。また、地方自治体の消費税増税によって増えた経費分は、地方交付税によって手当てされることになっており、消費税増税を機に消費税を市民に転嫁する必要は全くありませんでした。国の言いなりにならず、住民の福祉と暮らしを守る地方自治体としての役割を発揮させることが必要です。
消費税率引き上げで国民には、5.7兆円もの負担を押し付ける一方で、消費の落ち込みを回避するための景気対策として、複数税率の導入や期限付きのキャッシュレス決済時のポイント還元、プレミアム付き商品券の発行、プレミアム付き自治体ポイント事業などの対策を実施しましたが、増税の痛みを回避することはできません。
本市のプレミアム付き商品券の申請率は34.59%、消費に与える影響の緩和には到底追いついてはいません。消費税はもともと低所得者ほど負担の重い逆進性のある税制です。
新型コロナウイルスの感染により地域経済・市民生活はいっそう冷え込んでいます。今、消費税を減税する事こそ経済をもとにもどす早道であり、国に減税を求めるべきです。
2点目には地方交付税の問題です。
令和元年度の地方交付税は、前年度比11.78%増の40億5800万円となり、臨時対策債と合わせると48億円、3億3000万円の増となりましたが、このうち約4億円は特別交付税ですから実質44億円となりました。
地方交付税の代替え措置である臨時対策債は、平成28年度より縮減しており、地方財政の健全化にむけた第一歩ですが、この間の市債の約6割は臨債が占めています。令和元年度の臨時対策債の償還金は約10億円となり、地方交付税の約1/4があてられたことになります。このことは、経常収支比率を引き上げる一因にもなっています。解消ためには地方交付税の法定率の引き上げを国に求めることが必要です。
同時に、総務省が28年度から導入したトップランナー方式による地方交付税の算定では、総額2億2千万円もの削減となり、市財政を大きく歪めてきました。国に対し地方の財源を保障するとともに自治体間の財政調整機能をはたすという本来の地方交付税の在り方を求めていくことが必要です。
3点目には、地方創生事業と市の事業の問題です。
平成27年度、安倍政権が突如として人口減少や地域経済の対策として打ち出した「地方創生」事業は、令和元年度で第1期が終了しましたが、東京一極集中が是正されて地方が元気になるどころか、人口減少と地域の疲弊をますます加速させるものとなっています。八街市の人口はこの5年間に約3,300人減少し7万人を切っています。
「まち・ひと・しごと地方創生事業」の令和元年度の八街市への交付金は66万9千円にとどまり、活用できない状況が続いています。
事業費の配分について、成果指標によるものではなく、必要度による配分こそが地方自治体の活力につながります。 第2次「地方創生」関連交付金については、地方自治体の自主性を保障し、すべての自治体を支援する使い勝手の良い制度に改めるよう引き続き国に求めることが必要です。
本市の地域再生・活性化に必要なのは、安定した雇用と社会保障こそが人口減少にたいする最大の歯止めです。市の基幹産業である農林水産業の6次産業化、さらに流通・販売、中小企業と小規模事業者の振興、地域おこし、住宅や商店のリフォーム助成制度へのいっそうの支援、自然・再生可能エネルギーの地産地消など、地方自治体が取り組む真の地域活性化策に取り組むことを求めます。4点目にマイナンバーカードについてです。
政府は、何としても国民にマイナンバーカードを普及させて、カードの一元化を図ろうと強力に推進しています。消費税増税対策のために、キャッシュレス決済のポイント還元、マイナポイントの導入し、2021年3月からは、カードを健康保険証として利用できるようにするなど、カードの取得率を引き上げようと躍起になっています。市は安易に同調することなく、マイナンバーカードはあくまでも任意であるということをしっかり受け止めた事務を進めるべきであります。
この間のマイナンバーカードへ経費は1億6000万円の国費・市費が投入されてきました。個人情報の漏えいやカードの紛失・盗難への危惧など国民の不安を置き去りにしたまま、マイナンバーカードの普及を進めようということ自体問題であり、厳しく指摘いたします。
国政に絡みの大きな問題の5点目には、水余りが指摘されているのにも関わらず、国が強引に進めて来た八ッ場ダムの問題です。令和元年度の八ッ場ダム建設への出資金は約1500万円。この間の出資金総額は2億5100万円となり、市民の大切な税金が投入されてきました。計画から68年、今年4月1日の運用開始となりましたが、今後、人口減少で水需要はさらに減り、水余りがもっと顕著になると予想されます。これから、市の井戸は廃止となり、八ッ場ダムだけではなく、霞ヶ浦導水の水を買わされることになり、水道料金への影響が心配されます。霞ヶ浦導水事業は難航し計画通りには進んでいません。この事業は中止し、今ある県水の余剰水の活用、国・県への補助金を要求し、市民のいのちの水を低廉な価格で提供する取り組みを求めます。
市政運営で指摘する問題は、市財政の柱、市税収アップのとりくみについてです。
31年度予算編成にあたり、「税負担の公平性の観点から課税客体の的確な捕捉や債権確保に努め、さらなる収納率の向上に注力する」と方針をだし、滞納整理への取り組みをつよめ差押え762 件を実施しています。中でも預貯金・給与は全体の75.7%を占め、学資保険までも差押えの対象としています。子育て真っ只中の世帯や、給与の差し押さえ額を少なくしてほしいと訴える滞納者への容赦ない対応がされています。こうした世帯の暮しはいっそう悪化し借金を重ねる生活に陥っています。親身な生活再建計画の中で滞納整理をすすめるべきです。
一方、市税収全体の4割を占める固定資産税の中の償却資産への適正かつ公平な課税への取り組みは進んでいません。納税者の自発的で適正な申告義務を促すための制度や関係法例の周知努力、納税環境の整備をすすめることが必要です。今、八街市に求められているのは、市民誰も取り残さない市政運営、弱者が大切にされるまちづくりです。社会的に弱い立場の市民を置き去りにしている市政運営であってはなりません。
まず、市営住宅の問題です。滞納する市民への市営住宅への入居拒否をやめ、住民サービスに徹することを求めます。公営住宅はセフティーネットとしての役割があり、希望する市民の誰もが利用できるよう住宅提供をすべきです。
また、高齢者が多く住む笹引・交進・朝陽団地は老朽化が進み、笹引きは建設から56年、交進は53年となり、住環境は劣悪な状況となっています。公営住宅法は「健康で文化的な生活を営むに足りる住宅を整備する」としていますが、耐用年数をはるかに超えた危険な住宅に市民を住まわせること自体問題です。台風・地震等災害から入居者を守れる市営住宅の整備は喫緊の課題です。高齢化が進む中で低廉、低層の高齢者住宅の建設を求めます。
2点目には、敬老会事業についてです。2年続けての中止となりましたが、年々参加者が減り、参加率は2割程度となっています。元気で会場に行ける、一部の高齢者だけを祝う事業となっており「すべての高齢者を祝う内容にすべき」との声があがっています。75歳以上の高齢者7400人に1人1000円の気持ちのこもった記念品を手渡す事業に切り替えても、令和元年度の予算計上分で充分対応できます。75 才以上のすべての方を対象にした事業への見直しを求めます。
3点目に、市民のくらしを支える、新たなタクシーの導入が求められています。
現在の高齢者外出支援タクシー利用助成事業は、対象市民に500円の利用券を配布しているから平等な対応をしていると説明していますが、申請率はわずか12.47%に留まっています。市街地から離れた北部地域や南部地域の市民からの「高くて使えない」との地域差、市民がこのままでは生活できないという切実な声・悲鳴にいかにこたえるのか。交通不便地域の市民を置き去りにするような市政は許されません。
市長の政治姿勢が問われます。市内どこの地域に住んでいても安心して暮らせるよう地方自治体の役割をしっかりと果していくことを求めます。
4点目に、次代を担う子どもたちの問題で、こどもの貧困への取り組みです。
厚労省が今年7月に発表した子どもの貧困率は、子ども7人に1人、ひとり親世では約半数が貧困状態にあり、3年前の前回調査から改善は見られず、児童のいる世帯の60.4%が「生活が苦しい」となっています。平成26年に成立した「子どもの貧困対策法」は、子どもの将来が生まれ育った環境によって左右されることのないよう、子ども達に対する教育の支援・生活の支援・就労の支援・経済的支援等の施策を推進のために、地方公共団体は当該地域の状況に応じた施策を策定することを求めました。また、昨年見直された法では、子どもの貧困の解消とともに、貧困状況にある子どものみならず、すべての子どもが心身ともに健やかに成長できるための取り組みを求めています。
しかし、本市の「子ども子育て支援事業」には、子どもの貧困対策の充実は掲げていますがこの5年間も、今後5年間の計画でもどれだけの事業を進め貧困対策をすすめるかの具体的な取り組みは示されていません。
貧困対策の取り組み中で、就学援助制度は大きな役割をはたしています。しかし、本市の就学援助費の受給率は、全国平均の15.1%には届かないという状況が長年続いており、その積極的な取り組みが必要です。
教育費の中で一番負担が大きい給食費の無償化は、一番の子育て支援策であり、子どもたちの健全な発達に寄与するものであり、少子化・子どもの貧困問題への、手厚い支援につながります。すべての児童・生徒にたいし給食費の無償化の導入を計画的にすすめることを検討すべきです。
令和元年度の給食費の収納未済額は、前年度より200万円減となったものの6100万円となっており、滞納児童生徒は増加しています。給食費の滞納をいつまでも放置すべきではありません。就学援助制度では、給食費が実費支給となっていますが、当面、給食費に限り、就学援助の対象世帯収入を引き上げ、無料化の対象者を拡充することを求めます。
子どもの貧困対策は義務教育だけではありません。大学生等に対する市独自の奨学金制度の創設がまたれています。新型コロナウイルス感染症拡大の中で、大学生、専門学校生の学びが困難になっています。親の収入の激減や、学生自身のアルバイトができなくなっており、高等教育無償化プロジェクトFREEの調査では、回答者の5人に1人が退学を検討していることが明らかになりました。今、抜本的な公的支援を行わなければ、学び続けることを諦める学生が大量に生まれる事態です。学生の教育を受ける機会の均等をはかり、また貧困の連鎖を断ち切るためにも市独自の給付型奨学金制度を求めます。
最後に、15億円の不用額についてです。
このうち、約4億8000万円は小中学校の空調設備整備事業の繰越分による不用額で活用できませんが、その他の不用額については、地方自治体の会計は「各会計年度における歳出は、その年度の歳入をもってこれに充てる」という会計年度独立の原則のもとに、市民が納めた税金は、その年度内で市民サービス・福祉の充実に活用すべきです。
例えば、1区50号線は延長約200mの拡幅事業を始めてから5年目となっています。時間をかけなければならないほど、工事は難航しているわけではありません。元令和元年の土木費は、1億2000万円を不用額としましたが、いったん減額補正をし、市民の安全・利便性を図るために、一日も早い完成に向けた取り組みをすべきではなかったでしょうか。
以上のことを踏まえ、2021年度予算にしっかりと反映できるよう求め、反対討論といたします。