令和2年度は、341億円という本市ではかつてない予算規模のもと、歳出309億7921万8千円のうち、一昨年の台風15号による農業・住宅被害への支援事業10億7226万円、コロナ対策72億3300万円の26.8%が投入され、二重災害の対応に追われた年となりました。市長はじめ職員のみなさんの一丸となったとりくみに敬意を表すものです。
同時に、わが党が長年にわたり、地域のみなさんと一緒に要望してきた児童館建設・18才までの医療費無料化の実施、また、南中学校屋内運動場改修事業、就学援助費補助単価の見直し、老人福祉センターの改修、消防団員火災出動手当の見直しなどのとりくみに高く評価し賛成するものです。
一方で、市民の立場から、指摘をせざるを得ない点もあります。
まず、市民のくらしに直結する市財政を大きく歪める、国の施策の問題です。
1点目に交付金についてです。
地方自治体の重要な財源となる地方交付税についてですが、地方交付税の代替え措置である臨時対策債は、令和2年度末の市債181億1100万円の内105億円で、全体の58%を占めています。臨債の蓄積により財源保障の機能を失っています。地方の財源不足を国と地方で折半するルールの継続は国の責任を投げ捨ているといわざるを得ません。地方交付税の法定率を抜本的に引き上げ、地方債への依存を早急に改善するよう、国に是正を強く求めることが必要です。
また、地方消費税交付金は、前年度比2億7000万円増の14億3800万円となりました。国は消費税増税分をすべて社会保障にまわすとしていますが、市の社会保障施策事業89億円うち地方消費税交付金の社会保障財源化分は1.8%の増となったものの、国庫補助金は2.2%減となり、財源の置き換えでしかありません。不足分は市債等でまかなっています。
社会保障施策事業を市債でまかなうやり方では、市財政は逼迫するばかりです。
今後、一層増大する社会保障施策事業に対する国の責任と財源保障をしっかり求めること。合わせて、地方消費税交付金の原資は低所得者ほど負担の重い消費税であり、コロナ禍で深刻な景気悪化に陥りつつあり、市民のくらし・営業を圧迫しています。市民のくらし・健全な市政運営の上からも、消費税を減税する事こそ経済をもとにもどす早道であり、国に減税を求めるべきです。
2点目に、マイナンバ―カードについてです。
交付の関連事務費は、前年度比216.8%増の3700万円となり、国は国民にマイナンバ―カードは「免許証や健康保険証と一体化し、便利になる」と取得を促し、マイナポイント事業を導入してカード交付を加速させています。
今後、このマイナンバ―カードと個人の預貯金口座をひも付けし、合わせて各自治体が管理していた膨大な個人情報をデジタル庁が集約・一括管理をします。「これでは、政府による国民監視だ」と弁護士など専門家から批判の声が上がっています。さらには、国民の同意もなく政府や一部企業が利活用することが可能となり、情報漏洩で個人情報が不正利用される危険性もあります。
あらゆる個人情報を、国が一元管理することの危険性とともに、情報流出をふせぐ保障はまったくありません。こうした問題への不安に答えることなく、マナンバ―カードの利用拡大の押し付けは市民の理解は得られません。マイナンバ―制度廃止を国に求めるべきです。
3点目には、市民のいのちの水の問題です。
国が強引に進めて来た八ッ場ダム建設が完成し、今後、人口減少で水需要はさらに減り、水余りが顕著になると予想されるもとでの運用開始となりました。
また、難航している霞ヶ浦導水事業の見直しにたいし、印旛郡市広域市町村圏事務組合は撤退することなく、取水量の減量を決めて計画に同意しました。市民からは水道料金への影響を心配する声があがっています。
今ある県水の余剰水の活用とともに暫定井の存続で、市民のいのちの水を低廉な価格で提供する取り組みを求めます。
次に、市政の問題です。
2020年から始まった市の後期基本計画のもと、SDGsの「一人も取り残さない」という基本理念にたった市政運営がどうであったかということです。
社会的に弱い立場の市民を置き去りにしている市政運営であってはなりません。
以下6点を指摘致します。
まず、市民の安全・安心のまちづくりについてです。
この間、いつ起こるかわからない大規模な地震にたいし、震度6弱の設定からの震度6強を想定した計画にするよう指摘してきましたが、国土強靭化地域計画の見直しが行われ、震度6強を表記しました。しかし、被害の推計は、旧表記の6弱で家の全壊230棟、重傷者は30人、死亡者は0。あらたな6強の揺れにたいし、全壊は197棟、重傷者・死亡者は同数となっており、6弱と6強の被害差がなく、家の全壊では6強の方が少なくなっています。被害の少ない方向でよしとするあり方では、市民の命や安全を守ることができません。防災行政に緩みを生じさる計画であってはならず、最大の災害に備える取り組みが早急に求められます。
また、市民の安全を守る点で、カーブミラーの早期改善が必要です。現在、設置されている多くは、気象条件が悪い時にはその役割を果たしていないのが実態です。道路整備が進まない中で、高規格のカーブミラー設置で、より安全性を確保することを求めます。
2点目には高齢者施策についてです。
高齢者のサービスに係る在宅老人援護対策費は、前年度比30.9%、約1000万円の削減となりました。その主なものは、高齢者外出支援タクシー助成制度・針きゅうマッサージなどです。これらの事業は高齢者が必要とする施策であり、縮小すべきではありません。
高齢者外出支援タクシー制度の事業成果では、「高齢者の孤立防止・健康維持・外出支援が図られた」としていますが、助成券一人48枚から30枚に減らしたことで、「外出をあきらめた」という高齢者、南部・北部地域に住む方や年金暮らしの方々から、「ますます利用できなくなった。見捨てられたようだ」という不安の声が上がっています。
市内、どこに住んでいても安心して暮らせることを保障するのが、自治体の仕事です。市民の切実な願いである誰もが安い料金で、玄関先から利用できる乗合タクシーの一日も早い実現を求めます。
3点目には、八街市の経済の屋台骨となる農業・商工業についてです。
農業・商工予算は全体の4.8%。一昨年の台風による甚大な被害にたいし、パイプハウス等の復旧支援が行われましたが、その一方では廃ビニールの処理搬入費はキロ当たり12.3円から34.8円に引き上げられ、2.8倍もの農家負担に農家の方からは「復旧支援を受けるには保険加入が前提で、しかも廃ビニールの処理は3倍近い負担では」と悲鳴が上がっています。復興へのさなかにこうした負担増はすべきではありません。農業後継者対策では、18.3%の減となっています。後継者育成という点からも、廃ビニールの処理に対する市独自の支援策を充実させることが必要です。
また、コロナ渦で地域経済が低迷している中、地域経済対策へ支援はあらゆる視点から対応していくことが求められます。
中でも住宅リフォーム助成制度は地域経済活性化への大きな役割を果たします。ところが予算500万円にいし決算額252万3200円、補助対象件数は31件で、執行率は約50%にとどめています。この間、地域経済波及効果は14.5倍と市長自身が認めている事業であり、50%の執行率であれば経済波及効果は半減です。一作年の台風・またコロナ感染の影響は、市内業者の経営を圧迫しており、このような時だからこそ、この事業の100%執行を求めます。
4点目に本市が最も遅れている住宅政策です。
高齢者が多く居住する交進・朝陽・笹引き住宅では、耐用年数をはるかに超え、公営住宅法でいう「健康で文化的な生活を営むに足りる住宅」には程遠く、老朽化し劣悪な住環境の住宅となっていることはこの間も指摘してきたところです。計画的に低廉・低層の高齢者向け住宅の立て替えで、安心して暮らせる環境整備を進めることは喫緊の課題です。
5点目に次代を担う子どもたちの教育についてです。
まず教育現場をあずかる教職員の問題です。教員の休職に対し代替えの講師の未配置は、教職員の大きな負担増となっています。また、教職員の働き方が問題になっていますが、小学校53%、中学校では57%の教員が1ヶ月45時間を超す残業をしています。厚生労働省が過労死ラインとしている残業時間80時間を超す教員は小学校10%、中学校12%となっており、45時間を超えない取り組みが必要です。そのためには、県に対し教員の増員を求めるとともに、市独自での教員の配置努力、また、支援員・カウンセラー・図書館司書の増員とともに、今まで以上に業務のいっそうの見直しで、働き方の改善に取り組むことは喫緊の課題です。
子どもの貧困対策のひとつである就学援助制度の支給率は、小学校では前年度比1ポイント増の8%に、中学校は前年度と同じ9%であり、全国平均の15%にまで一層の底上げの取り組みが必要です。
また、給食費の滞納状況は依然として多く、滞納総額は6700万円となっていま
す。何等かの理由で給食費を未納・滞納せざるを得ない児童生徒の心理的負担の解消をしていくためにも、就学援助制度の拡充・支援対策を強化することが必要です。
6点目に税徴収の在り方についてです。
令和2年度も徴収事務について、滞納処分の強化など徴収率の向上を図るとして、学資保険12件も含む差押えを実施しました。少額の学資保険を苦しい家計のなかから、将来の子どものためにと積み立てているものを差し押さえるやりかたは、少子化の中で子育て支援に逆行するものであり、直ちに中止すべきです。
また、「捜索を5回実施したが差押えの対象はなかった」とのことであるが、捜索に至る過程の対面・指導のあり方が問われます。滞納者の半数強が所得200万円以下であり、切羽詰まった暮らしの中から必死で支払いをしている実態を無視し、滞納者の財産を捜索する強権的なやり方は改善すべきです。
市税等の税収をアップさせるためには、国いいなりの差し押さえなどの収納対策の強化を進めるのではなく、住民の生活実態をよく聞き、親身に対応する相談・収納活動に転換することを求めます。
最後に、15億円の不用額についてです。前年度も15億円を超す不用額を出しています。予算の積算根拠に対して、これだけの不用額が2年連続して出ることに疑念が生じます。予算の承認を求めた議会に対する信義とともに、予算執行に係る相互牽制の観点からも、事業がある程度確定した後、速やかに減額補正をし、市民要望に応えた市政運営、財源の有効活用をすべきです。
特に、新型コロナウイルス感染症の拡大のもとで、これだけの不用額があるのにもかかわらず、PCR検査など迅速な市独自の対策がとられてこなかったことは大変残念なことです。「市民の命と暮らしを守ることを第一の八街市」にしていくことを求め反対討論とします。