令和4年度予算は、前年度比7.5%増の236億9000万円となり、歳入では市税・交付税・市債の増、歳出では消費的経費が前年度比0.9%減、投資的経費は169.7%と大幅な増加となっています。
こうしたもとで、新年度の重点施策を新型コロナウイルス感染症対策・通学路の安全対策・子育て支援とし、5億2000万円を確保するとともに、消防団の処遇改善、児童クラブの整備、庁舎・保育園・幼稚園の低炭素社会に向けたLED化、空き家の適正管理を図るなど新規・拡充事業を高く評価するものです。
一方で、市民の立場から問題点を指摘せざるを得ない事業もあります。
まずは、国がらみの問題です。
その一つは、マイナンバ―カードの普及促進についてです。
政府は2021年度のマイナンバー制度の関連経費1453億円を費やし、さらに、2022年度には普及予算として1027億円を確保しています。政府が管理・運営しているマイナポータブルを入口とした情報連携を拡大させ、あらゆるデーターを行政側に集積し、マイナンバ―カードと結びつけるために、申請促進の宣伝を強化し、22年度末までにすべての国民への交付率100%を目標とし、健康保険証利用、マイナポイントなど国民がカードを使わざる得ない状況をつくりだす普及策を講じています。
昨年5月、デジタル関連法が成立しましたが、行政機関が特定の目的のために集めた個人情報を、本人同意もないままに目的外利用、外部提供し、成長戦略へ、企業の利益につなげることができるようにしました。このことは、個人情報保護をないがしろにし、プライバシーを侵害するおそれがあります。また、国と自治体の「情報システムの共同化・集約」を掲げており、地方自治体は、国がつくる鋳型に収まる範囲の施策しか行えないことになりかねません。また、強力な権限をもつデジタル庁は、国の省庁にとどまらず、地方自治体や準公共部門に対しても予算配分やシステムの運用について口を挟むことができるようになり、地方自治への侵害の問題も発生してきます。さらにデジタル法は、個人の預貯金口座とマイナンバーカードをひも付けすることなどを盛り込み、国民の所得、資産、社会保障給付を把握し、国民への徴収強化と社会保障費の削減を進めようとしています。
カードの申請交付が開始され6年目を迎えますが、八街市のマイナンバ―カードの交付率は22年1月1日現在、4割弱という状況です。交付率が伸びないのは、市民にメリットが感じられず、個人情報の漏洩や集積、利用拡大への不安が大きいからです。国民が必要としないマイナンバーの押し付けはやめるべきです。
今一つ、国の施策を押し付けている、霞ヶ浦導水事業の問題です。
この事業への出資金は新年度490万円となっています。八街市も加入する印旛広域水道は、水余り・人口減少のもとで昨年4月、八ッ場ダムからの受水を開始しました。また、霞ヶ浦導水事業の最終工期を令和5年度から令和12年度への変更に同意し、事業費600億円の積み増しを認めましたが、今後の水道事業への展望はありません。
八ッ場ダム完成により、印旛広域水道の受水量は1000立方メートルの増加となっています。さらに、今後の受水計画は、平成27年から9年間の「市水道ビジョン」では、八ッ場・霞ヶ浦導水事業の完成で印旛広域水道からの給水量が6900立方メートルから15970㎥、2.3倍になるとし、その受水費は5億3000万円としています。
市は、水道事業にたいし、新年度も一般会計から1億6000万円を補助し、市民への水道料金の負担軽減に努力をしています。さらなる高い水道料金が市民にのしかかり、水道事業経営への圧迫となることは明らかであり、今後の水道事業の在り方が問われています。
今やるべきは、印旛郡市広域で水余りをきちんと論議し、県水の余剰水の活用、暫定井戸を廃止しないで活用することなど、市民のいのちの水を低廉な価格で提供する取り組みが必要です。
市政問題では、長引くコロナ禍のもと、市民のくらしをいかに守るのかということが問われます。
まず、市内どこに住んでいても安心して暮らせる「市民のくらしの足」乗合タクシーの問題です。
市は「計画期間内に乗合タクシーではない公共交通の実証実験を実施する」と説明してきましたが、昨年10月のふれあいバス運行の見直しでは、空白地域を網羅するデマンドタクシーの取り組みは示されませんでした。市民は、期待が大きかっただけに、落胆も大きく、「見捨てられたのか」という不信感さえ持っています。
予算審議の中で、「新たな乗合タクシーの実証実験をR5年度秋から実施したい」との答弁がありましたが、それまでの間の対応策はありません。せめて、「高齢者の孤立防止・健康維持・外出支援を図る」としている高齢者外出タクシー支援制度の助成券を30枚から48枚にもどし、南部・北部の交通困難地域の市民には枚数を多く
するなど、当面のくらし支援を実施すべきです。
高齢化が進む中で、市民一人ひとりが主体的に行動できる街づくり、1人も取り残さないまちづくりの視点に立ち、実証実験を手前に引き寄せ、市民の切実な願いである誰もが安い料金で、玄関先から利用できる乗合タクシーの1日も早い実現求めます。
2点目にコロナ渦の市民生活支援で、水道・下水道料金の軽減についてです。
今、市民生活は食料品や灯油代、電気・ガス代などの値上げやガソリンの高値が続き、この値上げの波は、コロナ禍の生活苦に追い打ちをかけています。
新型コロナウィルス感染症の影響により、市民は外出自粛要請による自宅での活動時間が増加したことによる光熱水費の増加、また、事業所においては、緊急事態宣言を受けて休業や営業時間の短縮等による売上げの減少など経済活動は低迷しています。影響を緩和するため経済的負担の軽減支援が必要です。コロナ地方創生臨時交
付金の活用で水道・下水道料金軽減の実施を求めるものです。
3点目に税滞納市民への対応です。
いまだに生活が成り立たなくなるような徴収強化の在り方を見直すことです。
R2年度の決算でも滞納者への差し押さえが増加し、給与・預貯金が約8割占め、学資保険までも差し押さえています。子どもの教育・進学のためという目的で掛けている学資保険を差し押さえることは、子どもたちの進路に重大な影響を与えるものであり、断じて認められません。
滞納者の財産をあらゆる手段で差し押さえるというやり方でなく、滞納者の生活を立て直しながら相談にあたる方向へ転換し、国税庁「税務運営方針」の「納税者に親切に接し、苦情あるいは不満は積極的に解決するよう努めなければならない」とする徴収業務に徹することを強く求めるものです。
4点目に耐用年数をはるかに超え、老朽化した市営住宅の問題です。
新年度は、建設から57年経過した笹引き住宅住民の朝陽住宅への移転補償予算が計上されましたが、朝陽住宅も建設から50年となり、耐用年数は経過しています。
また、建設から54年目となる交進住宅の対策も進んでいません。どちらも老朽化が一段と進み、災害時には危険が伴うことは明らかであり、公営住宅法1条の「健康で文化的な生活、良好な住環境」からほど遠いものとなっています。今後、高齢者人口が増加する中で、高齢者が安心して暮らせる住宅が必要であり、早急な計画の
見直しを求めます。
5点目に子育て支援への取り組みについてです。
国民健康保険税の均等割は、生まれたての赤ちゃんから国保に加入する全ての家族にかかる、人頭税のようなものです。社会保険にはこの均等割りはありません。国保税は子どものいる世帯にとって、とりわけ重い負担はとなっており、多子世帯ほど滞納が多いという実態があります。国は新年度から未就学児のみの減額を実施しますが、未就学児のみの減額では子どもの貧困対策にも、子育て支援にも追いつきません。八街市は、18才までの子ども医療費の無料化を実施して、子育て世帯から喜ばれています。新年度、子どもの減少の中で医療費は前年度より1千600万円の減額となっています。この減額分を活用して18才までの子どもの均等割りをなくし、子育てをしっかり支えることを求めます。また、子育て支援として、中学生以上の居場所の問題です。R3年度は児童館が開設し、多くの子ども・市民から喜びの声を聴きますが、一方で、中学生以上の利用ができないという声もあります。学童保育の移転による跡地は、中学生以上の居場所づくりとしての活用を求めます。新年度は、保育園の保育士・看護師の派遣業務7名分7012万円を計上していますが、これは、正規職員10名以上を採用できる予算です。派遣業務斡旋会社への支出を見直し、正規職員の確保で安定的な保育園の運営を補償すべきです。
6点目に教育の問題です。
学校図書館はこれまで、読書・学習・情報のセンターとなることが求められてきました。この3つの機能に加えて、コロナ禍での子どもたちの「居場所」を提供し、子どもたちが安全・安心して過ごせる場所としての機能が求められています。また、不登校対策の一環としても、各学校1名の図書館司書の配置が必要です。
次に、小学校・中学校の教材備品等購入費・理科教育振興用備品費についてですが、令和4年度予算編成にあたり、教育分野にまで増額を認めないという一律の予算編成を求めています。
教材備品購入費については、R2年度から小学校は153万9千円、中学校は133万7千円と同額であり、各学校に1学級分のしか確保されていません。義務教育でありながら、子ども・教員に我慢を強いるものであり到底認められません。
文科省は子どもたちの確かな学力の育成を図るために、R2年度から11年度の10ヵ年を計画的な整備を促進するとし、単年度800億円の地方交付税措置を講じており、これを活用して子どもたちの学びの保障をすべきであり、早急に見直すことを求めます。
コロナ渦で子どもの貧困問題にいかに取りくむかも問われています。
就学援助費の受給率は小中学校とも10%以下と全国平均を下回っており、引き上げへの取り組みとともに、教育費の中で一番負担が大きい、給食費の無償化導入を計画的にすすめることを求めます。
また、コロナ感染拡大の中で、大学生・専門学生が学びつづけることが困難になっています。教育を受ける機会均等を図り、貧困の連さを断ち切るために、市独自の給付型少額制度を求めるものです。
7点目に市の基幹産業である農業予算についてです。
前年度比8%減となっていますが、担い手を増やし、農業所得を引き上げることは喫緊の課題です。市の後期基本計画で掲げている「かせげる農業」への取り組みとともに、地域資源を生かした活気あるまちづくりを求めます。
最後に、本年3月をもって退職される職員のみなさん。ここ数年のかつて経験したことのない台風被害、コロナ感染拡大、また、小学生が犠牲となった大事故、鳥インフルエンザの発生など、その対策と解決のために知と力を合わせ、日夜を分かたぬ取り組み本当にご苦労様でした。市民生活を守るために、全職員の先頭にたってこられたみなさんに深く感謝を申し上げ、反対討論を終ります。