議案10号                        

平成29年度 八街市一般会計歳入・歳出決算認定に対する反対討論

 

 

   市民の暮らしにアベノミクスの効果は未だ実感がありません。格差と貧困が一層進む中で、29年度は70歳以上の高額療養費制度の限度額の引き上げ、後期高齢者では所得割の5割軽減を2割軽減に引き下げ、元被扶養者に対する軽減の縮減、介護保険では、高額介護サービス費の月額限度額の引き上げなど社会保障制度が次々と改悪させられ、医療や介護などを中心に負担増が相次いでいます。家庭の収入も年金が切り下げられ、現役世代も非正規雇用の拡大で、低賃金と不安定な雇用がひろがり、暮らしは一層苦しくなっています。

 市民の暮らは、国の政治に大きく影響されます。地方自治体の長に求められるのは、国の悪政から市民を守る防波堤の役割と、市民の立場から国や県にしっかり意見を言うことではないでしょうか。

 

   29年度は、市の財政を大きく左右する国・県の補助、交付金・出資金の在り方が一層、歪められた決算となったことが特徴です。

   その1点目には、地方自治体の一般財源となる地方交付税です。

   この5年間で比較すると臨時対策債と合わせても6億3000万円の減で、地方交付・臨時財政対策債・市税合計の財源比較では、2億2000万円減となり、十分な財源確保にはなっていません。

   地方交付税制度は、は本来、自治体が行政サービスを標準的に行う経費を基準に、自治体の地方税等の収入でまかないきれない不足分について、どの自治体にも財源保障する制度です。しかし交付税の算定に当たり、人口減少等対策費について「取組の必要度」に応じた算定から「取り組みの成果」へと3年かけて変更すること。また、地域の元気創造事業費も3年かけて行革努力分算定から地域活性化分の算定に変更しますが、どちらも成果による算定であり、行政サービスの低下と自治体間競争に駆り立てるものでしかありません。

 また、28年度から導入された「トップランナー方式」により、民間委託・民営化など「行革」が進んでいる自治体を基準に地方交付税が算定されています。29年度の削減額は28年度とほぼ同額の4200万円なっています。これは市町村に「行革」による経費削減を競わせ、成果を上げられなかった市町村は「効率化」が図られなかったとして地方交付税の減額をするというものです。このようなやり方では今後、地方交付税は減額されるばかりであり、地方財政を大きく歪めていくものです。国が望む「行革」を実施するように誘導することは、市町村のことは市町村自らが決めるという団体自治に反することであり、認められません。

 また、地方交付税の代替措置である臨時対策債は、29年度末の市債総額171億7470万円うち110億7300万円で全体の64.5%を占めています。平成25年度以降、通常債の発行額を上回り年々増大しています。臨時財政対策債がいかに市債を膨らませているかの現れであり、本来のあるべき姿ではありません。通常債の大幅な削減は住民サービス低下につながっていることは明かであり、このゆがんだ地方財政をたださない限り地方の財政難は脱却できません。

 2点目には、ローカルアベノミクスをめざし、「地方創生」をすすめる地方創生交付金です。27年度からスタートしたこの制度は当初5700万円だったものが、29年度はわずか76万円であり、これでは地方の再生はできません。

 国は、地方自治体が現に取り組んでいる地域に住み続けられる安定した雇用、若者が安心して結婚・出産・子育てなどさまざまな地域活性化策を支援すべきです。成果を上げた自治体に段階的にシフトするやりかたは、交付税制度をゆがめています。すべての地方自治体を支援し、使い勝手が良く自主性を保障したものに改めるよう強く求めていくことが必要です。  

 3点目に28年1月からスタートしたマイナンバー制度です。

 26年度から29年度までの整備事業費は8392万円、国の制度でありながら市の持ち出しは1249万円になっています。29年度は新たにマイナンバーの連携が地方自治体にまで拡大され、国・地方自治体が管轄している個人情報は広く共有となりました。この制度は市民にとっては利益もなく、むしろ個人の情報漏洩の不安を持つ制度を、市民の税金を使ってまで実施すべきではりせん。市民のカード発行に係る事務費は930万円が投入されましたが、カードの発行率は8.6%にとどまりっており、市民にとっての必要性や期待がないことがわかります。マイナンバーは、徴税強化と社会保障費抑制を目的に国・財界の都合で導入されたもので、国民に不安と弊害をもたらすマイナンバーは中止し、廃止へ向け見直すよう国に意見を上げることが必要です。

 4点目には、広域事業費の八ッ場ダム出資金です。当初事業の2.5倍増となり、本市の負担は31年までに3450万円の出資が予定されています。無駄な大型公共事業の典型として八ツ場ダムに批判が広がる中、不要不急の大型公共事業を見通しも不明確なまま推進し、それがうまくいかなくなったら国民・自治体に負担を求めるやり方に道理はありません。今後、各自治体は水余り問題や料金高騰に直面することとなり、問題だらけの八ツ場ダムは中止・凍結を含め見直しを求めるべきです。

 5点目には、暮らしの助成制度についてです。

 生活家庭用排水による河川の水質汚濁や住環境汚濁を抑止し普及を早期に図るためにすすめられてきた小型合併処理浄化槽設置事業費は前年度比62%減の14基、また、住宅リフォーム助成事業は前年度比45.8%減の19件の補助にとどまり、地域温暖化防止・再生エネルギーの導入促進を図るために導入されてきた住宅用太陽光発電設備導入推進事業費は対前年度比87.5%の減でわずか5基の設置、住宅耐震促進事73・3%減で1件の事業にとどまるなど、国・県の補助金削減にあわせ一般会計からの支出を削減させ、事業を大幅に後退させています。どれも地域経済活性化や市民の住環境整備に必要な制度です。

このように国・県の予算削減で事業に大幅な影響を及ぼし、地方行財政が歪められています。国・県に対し「地方財政を守れ」と意見をあげる同時に、しっかりとした市民の暮らしを守る市政運営が求められます。

 

 29年度の本市の事業は、市ホームページのリニューアル・広報八街の電子配信で

市民に一層開かれたまちづくりをはじめ、南部包括支援センター開設、病後児保育事業、小中学校就学援助の入学前支給、小学校空調整備など新たな事業への取組を評価するものです。

 しかし、市営住宅入居を希望していても滞納者は入居できないという制裁措置や、75歳以上の後期高齢者医療制度の保険料軽減措置の縮減への対応もありません。障害者基本計画・福祉計画策定時のアンケートには、難病患者の約半数が経済的援助を求めていますが、わずかな見舞金は削減したままなど市民に寄り添うどころか、29年度も税の徴収強化をすすめ、差押え件数は過去最高の789件、預金・給与・生命保険が9割を占めています。今年1月給与が振り込まれた預金を差し押さえられ、途方に暮れた滞納者が自殺を図ろうとした問題が発覚しました。生活困窮や経営難となり納期内納税ができなくなった滞納者に対して、滞納整理の最後の手段である財産差押えで迫る収納行政は改善し、自主納付できるよう丁寧な生活再建を支援すべきです。

 こうした途方に暮れる市民をおきざりにする一方で、市長交際費は83万円となっています。行政を取り巻く社会経済情勢の変化に伴い、公費の使途に対する市民の関心が高まっています。交際費の中で、支出の最も多いのが飲食を伴う会費となっています。市長交際費の原資は市民が納めた税金であり、原則的に食糧費が伴う支出はなくすようにすべきです。透明性の確保と公費支出の公平性を高めるためにさらなる改善を図るべきです。

 

 市の事業計画策定にたいし、防災計画修正業務599万4千円 市営住宅長寿命化計画策定業務767万9千円や、健康づくり増進計画策定事業526万4千で委託しましたが、本来なら、業務を掌握する職員の手で作り上げることが求められます。

 中でも防災計画修正業務については、市は、防災アセスメント調査の報告書を3月に発表し、震源地は県と同じ県北西部。震度6弱、全壊197棟、重傷者30人と被害予想を示しました。市長は、「県調査との整合がとれ、交通や通信などの広域的な被害による影響についても検討することができる」と説明していますが、県と同じ県北西部を震源と設定するのであれば、業者委託をする必要はありません。県は人口密集地が最大の被害をもたらすと仮定したためであり、地震発生の可能性が高いからではありません。平成27年に県が発表した地震被害報告書は、県内において「震度6強の強い揺れが地域を問わず発生する可能性があり、予防的な対策が必要」と警告しています。国の中央防災会議も東北地方太平洋沖地震の後、「今後の想定地震はあらゆる可能性を考慮し最大クラスを検討すべき」としました。この警告・指摘にもとづいて八街市の最大地震は、市直下を震源とし震度6強に見直し、市民の安全と安心のための減災対策にとりくむべきです。

 

 日本共産党は市民の皆さんと市内どこに住んでいても安心して暮らせるために、安価で利用できるデマンド乗合タクシーの実現を求めてきました。

 しかし、昨年10月から始まった高齢者外出支援タクシー制度は、バス1路線を廃止した運行費約800万円で導入したものですが、利用者を限定しており、誰もが利用できません。また、市街地より離れた地域の市民からは、利用したくても利用できないと利用にあたっての地域格差が出ており、実施から1年を経過しないうちに制度の矛盾が噴き出し、経費も3.3 倍に膨れあがっています。

 決算の総括質疑で「制度改善はいつまでにやるのか」という質問に、「グループタクシーとしていっそう活用を呼び掛けていく」という答弁をしています。市民の「いまの制度では暮らしていけない」という悲鳴にしっかりと耳をかたむけるべきです。

市民の暮らしの足を守るためには、交通政策基本法「国民の自立した日常生活の確保を図る」とした基本理念を明確に位置づけ、国の補助金を活用して誰もが安心して暮らしていくためのデマンド・乗合タクシーの実現が急がれます。

 

 長寿をお祝いし開かれる敬老会事業は、すべての高齢者を対象にしているものの、元気に会場に行ける高齢者だけがお祝いされる事業に変貌しています。年々参加者は減少し、30年度は22.5%となっており、事業の意義が問われます。すべての高齢者を対象にした事業への見直しが求められています。

 

 教育予算は、義務教育に支障をきたすことのないよう予算措置がされなければなりません。2012年から始まった学校図書館5か年計画は、最終年度となる29年度で、学校図書館標準を達成することとなりましたが、図書館司書の配置は未だ3校に1人の配置となっています。子どもたちがいつでも利用でき、心豊かに育つ環境にはなっていません。図書館司書の各学校への整備が早急に求められます。

 文科省は、新学習指導要領に基づく整備目標を定め、平成24年度から33年度までの10ヵ年に総額で約8000億円、毎年800億円の地方交付税措置をするとし、各自治体はこの措置を活用して計画的に教材整備を行うよう通達を出しています。

 29年度は、小学校1校あたり33万7800円。中学校65万8500円となりましたが、計画的な予算確保となっていません。早急な対策が必要です。

 児童・生徒の不登校・長欠は小学校89名、中学校142名と依然として多い状況です。学校だけが唯一の学びの場とせず、一人ひとりの子どもの学びや人間的な自立を優先させ、そのためのさまざまな教育を保障するさらなる取り組みが必要です。

 今、社会の貧困と格差が子どもたちに大きく影響しています。日本の子どもの貧困率は過去最悪の16・3%となっています。中でも深刻なのはひとり親家庭世帯で、その相対的貧困率は54・6%にもおよび、その対策は切実です。国の子どもの貧困法のもと、「子どもの貧困大綱」は「親から子への貧困の連鎖を断ち切る」ことをうたい、「教育支援」「生活支援」「保護者に対する支援」「経済支援」など具体化を求めています。本市もこの大綱にそって、全庁をあげて推進していくことが必要です。

 中でも学校給食費は、滞納額は年々増加しこの5年間で1800万円増の6878万円となり、滞納現年分は342人、加年度分150人増の2178人となっています。滞納を続ける家庭は子どもが育つ環境として何らかのリスクがあり、未納は支援が必要なシグナルと受け止めるべきです。1954年に成立した学校給食法では、給食は教育の一環として位置づけられ、憲法では義務教育は無償としています。給食費の在り方を見直し、家計の負担軽減による子育て支援や少子化対策として取り組んでいくことを求めます。

 以上の立場から平成29年度 一般会計決算に反対するものです。